こんにちは、まなびや たぬき堂のたぬきです。
「あなたは人の話を聴くのが好きですか?」
苦手だなぁという人も多いかもしれません。
でも最近「傾聴力」という本が出るくらい、人の話を聴くことが大切だと言われています。
そこで今日は、「なぜ、人の話を聴くことが大切なのか」という問いについて、たぬき堂らしく、じっくりと考えてみたいと思います。
なぜ、人の話を聴くのが苦手なのか
人は、話すことは好きでも、「聴く」ことが苦手です。
相手の話を聴いているようでいて、次に自分が何を話そうか考えていたり、頭の中で違うことを考えていたりします。
今日の予定、やるべきこと、抱えている不安、過去の後悔…。
私たちは、いつも何かを考えています。
そんな“自分の頭の中”に意識が占拠されていると、他人の話が入ってくる余白がありません。
「話を聴く」というのは、相手に“関心を寄せる”ということ。
けれど、自分以外の誰かに興味を持つというのは、実はとてもエネルギーがいることです。
自分のことでいっぱいいっぱいの日々の中で、人の話を聴くというのはとても難しいことなのです。
貴重なチャンスを見逃している
だから私たちは、つい「この人の話なんて、自分には関係ない」と、無意識に判断し、スルーしてしまいます。
けれど、自分のことばかりに気を取られていると、目の前にある大切なチャンスを受け取り損ねているかもしれません。
私たちが出会うチャンスや学びの多くは、「自分の話」ではなく、「誰かの話」の中にあります。
ふとした一言、何気ないつぶやきの中に、チャンスが隠れていることがあるのです。
でもそのチャンスは、しっかりと「聴いている人」にしか訪れません。
そして、そうしたチャンスや学びをもたらしてくれる人は、えらい立場の人や、お金持ち、カリスマ性のある有名人だと思われがちですが、実はそんなことはありません。
一見普通の人でも、話をしてみると、面白い趣味を持っていたり、何かの専門家だったりします。
定年してアルバイトで働いているおじさんも、かつては世界を飛び回って仕事をしていた人だったりします。
でも多くの人は、見た目や肩書きで人を判断して、「この人の話は聴かなくてもよさそうだ」とスルーしてしまうのです。
さらに言うと、何かの専門家でなくても、長年の人生経験や、苦労や失敗から学んでいる人はたくさんいて、その人たちからも、私たちは学ぶことができるのです。
話を聴くことで気づきが得られる
人の話を丁寧に聴いていると、自分では思いもよらなかった考え方や価値観に触れる機会があります。
たとえば、あるお母さんがこんなことを話していたとします。
「子どもが思い通りに動かないとき、私は“育ててるんじゃなくて、見守ってるだけ”って思うようにしてるんです。」
それを聞いて、「子育て=コントロールすること」だと思っていた自分に気づく人がいます。
仕事や人間関係でも「うまくやろう」と握りしめていたものを、少し手放してみようと思えるーそんな気づきが得られることもあるのです。
また、まったく違う業界や生き方をしてきた人の話には、自分にはなかった視点がたくさん詰まっています。
たとえば、農業をしている人の「天気には逆らえない。だからこそ、変化を受け入れることが大事」という話は、都市で働く人にも大きな気づきを与えてくれます。
このように、人の話には「教科書には載っていないリアルな学び=生きた教材」が詰まっているのです。
そして何より、自分とは違う意見や生き方に出会うことで、「こうじゃなきゃいけない」と思い込んでいた心がふっとほどける瞬間があります。
世の中には教科書では学べないことがたくさんあります。
そうしたことを学べるのが、人の話を聴くことの一番の贈り物なのかもしれません。
世界は「聴く人」に開いていく
そして不思議なことに、人は自分の話を聴いてくれる人に、心を開くのです。
それは、相手が特別に優れたアドバイスをしてくれたからでも、何か立派な言葉をくれたからでもありません。
ただそこに、「ちゃんと聴いてくれている」という温かいまなざしがあるからです。
誰かが真剣に自分の話に耳を傾けてくれているとき、私たちは“存在をまるごと受け入れられている”ような安心感を覚えます。
その瞬間、心の奥にしまっていた想いや、言葉にならない気持ちが、少しずつほぐれて、静かにこぼれ出してくるのです。
話を聴いてもらえるということは、「あなたの声は、ちゃんとここに届いていますよ」と伝えてもらえること。
それだけで、その人に心を開いて、話してみようと思うのです。
「聴く」というのは、単に“情報を受け取る”のではなく、相手とのあいだに信頼を育み、自分の心の器を広げていく行為なのです。
聴くということは、興味を持つということ
「話を聴く」というのは、相手に心を向けること。
つまり、相手に興味を持つ、ということが必要です。
小さな子どもたちは、大人の話を目を輝かせて聴きます。
その目は、「知りたい」という純粋な好奇心に満ちていて、世界をもっと広げたいというエネルギーにあふれています。
でも、大人になるにつれて、私たちはその力を少しずつ忘れてしまう。
相手の言葉を遮ったり、表面的な部分だけをなぞったり、本当の意味で「聴く」ことから遠ざかってしまいます。
だけど、あの「子どものようなまなざし」は、いまも心の奥に残っているはずです。
おわりに 聴くことは、やさしさであり、力である
聴くことは、単なる受け身ではありません。
それは、自分の枠を広げ、他者を理解しようとする能動的な行為。
そこには、やさしさも、強さも、知性も宿っています。
そして、「よく聴く人」は、人から好かれるだけでなく、物事の本質に触れ、信頼され、必要とされていきます。
たぬき堂ではこう考えます。
聴く力とは、自分と世界をつなげる力なのだと。
スマートフォンやSNSの通知が飛び交う日々の中で、静かに人の話に耳を澄ます時間は、とても贅沢で豊かなものです。
今日の終わりに、誰かの話を、ただ静かに聴いてみてください。
あなたの聴く力は、あなたの世界をそっと広げてくれます。
やがて、その聴く姿勢が、誰かの救いになる日もくるかもしれません。