「あなたの夢はなんですか?」
子どもの頃、よく聞かれた問いかけです。
大人になった今でも、「やりたいことは何?」と聞かれることがあります。
でも、その問いにすぐに答えられる人って、案外少ないのではないでしょうか。
胸を張って「これがやりたい!」と即答できる人は、一握りかもしれません。
かくいう私も、すぐに答えられないタイプでした。
今日は、「やりたいことが、わからない」というテーマで、少し立ち止まって考えてみたいと思います。
やりたいことは、考えてもわからない
多くの人は、「自分のやりたいこと」を見つけようと、真面目に一生懸命考えます。
けれど、頭の中でいくら悩んでも、しっくりくる答えが出てこないことの方が多いのです。
私が大切にしている考え方に、スティーブ・ジョブズの「コネクティング・ザ・ドッツ(点と点をつなぐ)」という言葉があります。
これは、「将来を予測して点と点をつなぐことはできない。できるのは、過去を振り返ったときに、それらの点がつながっていたと気づくことだ」という意味です。
つまり、「やりたいこと」は、最初から見えているものではなく、
あとから振り返ったときに、「あれもこれも、全部つながっていたんだ」と思えるようなものなのです。
「わからない」ことは、悪いことじゃない
私たちは、「目標がある人」や「夢に向かって頑張っている人」に憧れます。
そして、なんとなく「自分には夢がない」とか「やりたいことがわからない」ということを、悪いことのように感じてしまうかもしれません。
でも、実際には、多くの人がそうやって悩みながら進んでいるのです。
「わからない」というのは、迷っている証拠でもあり、探している証拠でもあります。
そして、「迷い」は悪いものではありません。
迷いながらも前に進んだ経験が、いずれ「点」となり、「線」になるのです。
好きなことは、やってみないとわからない
「自分に合った仕事がわからない」
「本当にやりたいことが見つからない」
そんな悩みを持つ人は多いですが、たいていの場合、それは「まだ体験していない」からです。
実際にやってみないと、自分がそのことを好きかどうか、続けられるかどうかはわかりません。
読んだことのない本の内容を、表紙だけで判断できないのと同じです。
だから私は、まずは何でもやってみることが大切だと思っています。
アルバイトでも、趣味でも、ボランティアでも、旅行でも、本を読むことでもいい。
自分がピンときたもの、気になるものには、できるだけ手を伸ばしてみる。
やってみて「違うな」と思えば、やめればいいのです。
無理に続ける必要はありません。
その「違った」という経験も、ちゃんと“点”のひとつになるからです。
視野が広がると、興味も変わる
不思議なことに、人の興味関心は年齢や経験によって変わっていきます。
昔はまったく興味がなかったことに、ある日ふと惹かれるようになったり。
「自分には向いていない」と思っていたことが、思わぬきっかけで楽しくなったり。
私たちは、自分の中にある「可能性の種」に気づかないまま生きていることがあります。
でも、その種が芽を出すのは、何かのきっかけや経験があったときです。
いろんなことを経験することで、世界が広がり、その中で少しずつ「好き」が洗練されていきます。
「これは絶対に違う」というのも、貴重な発見。
「なんとなく気になるな」というのも、大切な手がかり。
好きなことは、頭で見つけるのではなく、行動しながら見つかるものです。
経験が自分をつくっていく
人は、経験したことのない世界のことは、なかなか想像できません。
だからこそ、いろんな場所に行ってみる。
いろんな人に会ってみる。
いろんな仕事をしてみる。
いろんな本を読んでみる。
そうやって、知らなかったことを知っていくと、少しずつ「自分の軸」や「自分らしさ」が見えてきます。
私はこれまで、「この道に進むべきか?」と悩んだとき、「とりあえずやってみよう」という気持ちで動いてきました。
結果的に、その選択が正しかったかどうかはわかりません。
でも、「やってみたこと」によって、確実に新しい景色が見えました。
そして、それが次の選択のヒントになりました。
どんな経験も、無駄じゃない
たとえ途中で投げ出してしまったことでも、誰にも認められなかったことでも、「意味がなかった」と感じたことでも、時間が経ってから「あの経験があってよかった」と思える瞬間があります。
むしろ、そういう「うまくいかなかったこと」の方が、自分を深く支えてくれていたりします。
大切なのは、「やったことがある」という事実。
それが、自分の人生に厚みを与えてくれるのです。
おわりに すべての点が未来につながっている
「やりたいことが、わからない」
そんなふうに感じることは、誰にでもあります。
でも、焦らなくていいのです。
すぐに答えが出なくても、全然かまいません。
大事なのは、「何をしてきたか」と「これから何をしてみるか」です。
点と点は、あとからつながります。
たぬき堂では、こう考えます。
どんな経験も、未来をつくる点になる。
点があるから、線になる。
線があるから、人生になる。
だからこそ、わからなくても、怖がらなくていい。
一歩踏み出して、いろんなことを試してみる。
その先で、きっと「自分だけの道」が見えてくるはずです。